2003年度 水資源・環境学会研究大会のご案内


〔研究大会〕テーマ: 「地域社会と水環境」

今年度の研究大会は、「地域社会と水環境」をテーマに開催します。地域社会の表情は、地形、植生、動物、空そして、水という自然の造形物が織り成して創られ、千変万化しながら時とともに移りますが、人間が水との長い絆から学んだことは、人が水に思いやりをこめて接すると地域社会の表情が豊になり、おろそかにすると貧しくなる、ということでした。すでに生活や地域から遠くなって久しい水は、今や再び地域社会の表情を明るくする万能薬として見直され、人と水との新しい絆づくりが始められています。この新しい課題に取り組んでいきたいと考えています。  
                    水資源・環境学会 研究大会事務局

  
   【大会会場】:すみだ中小企業センター 5階 会議室2・3
            TEL:03−3617−4351 東武亀戸線「小村井駅」徒歩6分
                          (東京都墨田区文花1丁目19番1号)

   【大会日時】:2003年6月14日(土)9:30〜10:30  受付・雨水資料館見学会
                        10:30〜16:30 研究大会
                        17:00〜19:00 懇親会 

 


  【研究大会プログラム】

   (9:30〜10:30)     受付・雨水資料館見学会
   (10:30)         開会
   (10:30〜11:30)    記念講演『革新的スカイウォータープロジェクト』
                              村瀬 誠(国際雨水資源化学会)
   (11:30〜12:30)    総会
   (12:30〜13:00)    昼食
   (13:00〜13:40)    基調講演 『まがりかどにきた水資源開発−「近い水」対「遠い水」−』                                                     森滝健一郎(岡山大学名誉教授)
   (13:40〜13:50)休憩

   
研究発表
   (13:50〜14:20)    秋田県玉川における水利と土地利用の展開 
                                      横山 俊一(立正大学・研究生)
   (14:20〜14:50)    遠州の水環境と市民運動      田渕直樹(天竜川漁協アドバイザー)
   (14:50〜15:00)    休憩
   (15:00〜15:30)    一自治体が取り組む円滑な雨水利用の普及・促進に向けての考察
                                         平井拓也(地域社会研究所)
   (15:30〜16:00)    地方自治体におけるISO9001とISO14001の環境コミュニケーション比較      
                    −認証取得の背景と効果の分析− 松尾 瞳美(アミタ株式会社)
   (16:00〜16:30)    総合討論
   (16:30)         閉会
   (17:00〜19:00)    懇親会                                       
            


2003年度研究大会 講演・発表要旨

記念講演 
『革新的スカイウォータープロジェクト』       村瀬 誠(国際雨水資源化学会)
  
  21世紀における持続可能な社会の実現の鍵は雨水にある。講演では、直面する世界の水危機の重要な処方箋である雨水利用について、「雨の意識革命」、「雨の文化革命」、「雨の技術革命」という雨の三つの点からアプローチし、その現状と課題について述べる。

基調講演 
『まがりかどにきた水資源開発−「近い水」対「遠い水」−』     森滝健一郎(岡山大学名誉教授)
 
 
水問題は、内外共に21世紀の課題である。「水の社会科学」という視点から水問題を捉えると、農村や都市は、「近い水」を得ようとして対立・調整を繰り返してきた。また、高度経済成長期の水資源開発は、伝統的水利秩序を「温存」する形で、ダム建設を中心に進められた。この結果、ダムの過剰建設が顕在化しつつも、いまだ水資源の過剰開発から、脱却しえない矛盾を抱えている。水資源の過剰開発は、水利用者にとって、「近い水」を荒廃させ、「遠い水」への依存をさらに強めることとなるが、そのことが渇水時に、「遠い水」は「近い水」よりも大きな影響を受けるなど、新たな諸問題を発生することになり、水資源開発そのものがまがりかどにきている。


研究発表
「秋田県玉川における水利と土地利用の展開」            横山 俊一(立正大学・研究生)


 近年のヨーロッパ諸国や北米の酸性降下物により酸性化した湖沼や河川とは異なり、日本には火山起源の硫酸や塩酸を含んだ湧水等によって酸性化された河川が東日本を中心にみられる。このため陸水環境の酸性化が世界的に顕著になる以前から、日本では各地の酸性水質の河川を酸性河川と認識し、その河川水を利用するため様々な対策がおこなわれている。そのため近年各地の酸性河川において恒久的な酸性水対策事業が行われるようになり、水利用の多様化だけでなく、本来酸性水質が通常であった酸性河川の河川環境も変化し、新たな河川環境も形成されつつある。 そこで本研究は秋田県雄物川水系玉川を事例とし、酸性水対策との関連から水利と土地利用の展開および流域の水環境の考察をおこなった。水利用は、各年代において様々な酸性水対策がおこなわれることで一時的には変化がみられたが、恒久的な酸性水対策がおこなわれるまでは、利用種類および量的な面共に大きな変化はみられなかった。しかし土地利用については新規開田等により大きく変化した。これらの水利用等の開発により水環境は大きく変化し、新たな課題も発生している。


「遠州の水環境と市民運動」      田渕直樹(天竜川漁協アドバイザー)
                            
 遠州には天竜川の堆砂問題と国交省のダム再編事業等や大井川の河原砂漠、浜名湖、日本一汚濁された佐鳴湖、中田島砂丘の脆弱化、遠州・静岡海岸等の海岸侵食と海亀の保護など緊急の課題がある。つまり河川や湖沼、海などでの環境・生態系の問題が殆ど全て揃っていると言えよう。 これらに対する遠州市民の取り組みは、サンクチュアリ・ジャパンによる海亀の保護や天竜川流域における産廃の調査、天竜川漁協による河川環境調査や啓発への取り組み、浜松環境ネット・ワークによる安間川共同事業で行政の協働作業等、全国レヴェルにおいても貴重な業績が存在する。そして今国交省が天竜川流域委員会を設立し、浜松環境ネット・ワークと天竜川漁協から1人ずつの委員参加に成功した。従来の公共事業は政官業だけで行い、市民への情報隠蔽と排除が為されてきた。しかしこれを機会に情報公開と市民参加を勝ち取り、市民主体の地域づくりに発展させるべきである。


「一自治体が取り組む円滑な雨水利用の普及・促進に向けての考察」      平井拓也(地域社会研究所)

 平成14年10月から同15年3月にかけて、「木津町雨水利用検討調査」に関する検討会が3回にわたって行われた。下水道課及びコンサルタントを事務局に据え、府及び町役場の関係各課・学研都市立地企業との意見交換という形で行われた。事業の普及・促進には、行政・市民・企業の良好なパートナーシップが必須であることは勿論であるが、庁内が一体となった連携が前提条件として求められる。しかし、全体的な協力の見込みは必ずしも芳しくなく、昨年にニーズの把握を目的として実施した住民アンケートと併せても多くの課題が残された。具体的には、日常的に使用するための定量的な確保・投資したコストに見合う効果への疑問が挙げられ、また、他の自治体の模倣による強引な事業化ではないかという意見が挙がった。今回は、事業実施までの報告に加え、自治体が取り組む雨水利用のあり方について、目的や意義付けの整理を行い、円滑な事業推進に向けての検討策を提案する。


地方自治体におけるISO9001とISO14001の環境コミュニケーション比較−認証取得の背景と効果の分析−                                                    松尾 瞳美(アミタ株式会社)
                                                   
 本報告ではISO9000s およびISO14001を認証取得した自治体を対象に住民にとっての取得効果を調査し、住民と自治体とのコミュニケーションにおける有効活用の可能性の分析を行う。 ISO9001を認証取得している自治体では、自治体内の全ての住民とのコミュニケーションを対象としており、さらにISO9001の2000年版を認証取得した全自治体において住民全体に対する住民満足度調査が実施されており、積極的に住民とのコミュニケーションがはかられていた。 ISO14001を認証取得している自治体は、その後住民とのコミュニケーションをこのシステムにのっとって処理したことがない自治体が多い。ISO9001が住民全体を対象にしていたのに対し、ISO14001では行政参加に積極的な一部住民との有効な環境コミュニケーションが実現できたケースがあった。 よって、住民が積極的に行政に働きかけるような自治体であればISO14001の方が有効に機能するが、そうではない自治体の場合、また行政区域内の人口が非常に多い場合には、ISO9000sの方がより有効に機能するという分析結果を得た。