2004年度水資源・環境学会
研究大会のお知らせ

2004年度研究大会は、夏期、冬期研究会の内容を一層充実させる目的で、多くの参加者を期待して、下記のテーマとして実施することが決まりました。

研究大会テーマ:「水循環と自然再生」

 改正河川法,環境基本法、農業基本法も含め、あらゆる施策に環境と住民参加が重視されるようになりました。また、新たに平成14年12月に「自然再生推進法」が制定され平成15年1月から施行されるようになりました。次年度の研究大会は、こうした自然重視の考え方を背景に水問題も流域単位での量、質及び循環を捉えた総合的な視点が求められています。昨年度テーマ「地域社会と水環境」を発展させ、流域から国土さらには広域エリアも対象とした地球規模の水循環も視野に入れて、21世紀の水、環境に関する課題を議論したいと考えています。地域社会の表情は、地形、植生、動物、空間そして、水という自然の造形物が織り成して創られ、千変万化しながら時とともに移りますが、適正な循環が維持されなければ、自然も文化も持続しないと考えられます。持続可能な発展が常に問題となる現代において、人類が永続的に生存できる環境のあり方とは何か、自然の循環との関連でいろんな研究成果、問題提起を期待しています。
 
                                                    水資源・環境学会 企画委員会

 



 [大会会場] :キャンパスプラザ京都(大学コンソーシアム京都)
        午前 2階 第1会議室  
            午後  2階 第3会議室
          [午前と午後、会場が変わります!]
          
        電 話:075−353−9100 
     (JR京都駅前・中央口を出て西へ200m、京都中央郵便局西隣)

 [大会日時] :2004年6月5日(土)  10:30〜17:00  研究大会
                    17:30〜19:00  懇親会
 
【問合せ先】  若井 郁次郎(大阪産業大学 人間環境学部)
          〒574-8530 大阪府大東市中垣内3丁目1番1号
          TEL:072-875-3001(内線7754)
          FAX:075-871-1259
          E-mail: wakai@due.osaka-sandai.ac.jp


 研究大会プログラム
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 10:30        開 会
 10:30−12:00 話題提供と対談 「水循環と自然再生」
                          仲上 健一 (立命館アジア太平洋大学)
                          黒田 大三郎(環境省)
 12:00−13:00 昼 食
 13:00−13:30 総 会

セッション1「水環境と生活」
 13:30−14:00 洪水リスクマネジメント技法に関する一考察
              −徳島県吉野川下流域をモデルケースとして−
            水田 哲生(元立命館大学大学院政策科学研究科博士後期課程)
 
 14:00−14:30 大仙陵池と狭山池にみる水環境再生施策の構図と課題
                                  −歴史地理学の視点から−
                               川内 眷三(四天王寺国際仏教大学)
 
 14:30−15:00 近世日本における魚附林と物質循環
                               若菜 博(室蘭工業大学)
 15:00−15:15 休 憩

セッション2「水循環と自然・地域再生」
 15:15−15:45 琵琶湖沿岸域における自然修復・再生の課題
                           −沿岸域管理の視点から−
                                    秋山 道雄(滋賀県立大学)

 15:45−16:15 地域再生の視点からみた水環境形成の課題と展望
                          足立 考之(内外エンジニアリング株式会社)
 
 16:15−16:55 総合討論
 16:55       閉 会
 17:30−19:30 懇親会


◆2004年度研究大会発表要旨◆


洪水リスクマネジメント技法に関する一考察−徳島県吉野川下流域をモデルケースとして−

                             水田 哲生(元立命館大学大学院政策科学研究科博士後期課程)

我が国は世界でも稀な災害大国であり、さまざまな種類の自然災害が発生している。また自然災害とは言いきれないが、地球温暖化の影響により降雨の様態が変わってきている。したがって、これまでの災害対策のやりかたでは十全な機能を発揮することができないものも一部では見受けられる。洪水というリスクに注目したとき、従来どおりのハード手法によって災害の発生を防止する努力を続けることは当然だが、同時に、水害が発生した際の手当てを考える必要が改めて注目される。そこで本研究では、水害リスクマネジメントについて取り上げ、金銭的な手段を中心とするソフト手法により「減災」を目指す。


大仙陵池と狭山池にみる水環境再生施策の構図と課題−歴史地理学の視点から−
                                               川内 眷三(四天王寺国際仏教大学)

伝仁徳天皇陵の周濠である大仙陵池周辺での都市化が著しく、灌漑用水池としての機能を喪失してほぼ40年が経過する。狭山池も水下地域での、農業の他用途への著しい転用から、灌漑用水の需要は減少し、その役割を大きく低下させている。
大仙陵池は二ケ所の集水路より用水を取水し、西側の周濠池の除げより排水する構造になっている。農業用水路に生活排水が混入して著しく水質が悪化したため、1970年代初頭に宮内庁の要望で、集水路からの取水をとりやめ、雨水のみを貯留するようになった。やがて周濠池内の水が澱んで腐敗し、悪臭が深刻な問題となり、こういった対策として、地下水を汲み上げパイプ管の設置によって浄水を導入し、濠水の水質保全に努めている。狭山池は、水下地域の洪水調節機能を目的にした「狭山池治水ダム事業」の大改修事業が施工され、2002年に全工事を完工する。この事業は同時に「狭山池ダム景観整備計画」として進められ、地域環境のなかに狭山池を位置づけたモデルづくりとして完成している。
筆者の最近の研究は、記紀記載の依網池と狭山池の開削に焦点をあて、その復原と水利システムを分析してきた。こういったなかで百舌鳥古墳群の古墳周濠池が位置する土地条件に着目し、集水に困難を極めたことから、用水確保に努めた歴史的経緯をとらえる3)。大仙陵池をはじめとする百舌鳥古墳群の主要古墳の周濠は、集水を企図して狭山池用水との関係を模索し、営々と築いてきた歴史をもつ。歴史地理学の視点に立脚して、大仙陵池と狭山池の水環境再生施策の課題について提起する。


近世日本における魚附林と物質循環                          若菜 博(室蘭工業大学)

日本における魚附林思想は1600年代初頭には存在していた。魚附林の背景には当時重要な産業資源(食料、肥料、灯油など)となっていたイワシ漁業育成の問題があった。1623年、佐伯藩(現在の大分県南部)の初代藩主・毛利高政の御触書(津久見 六右衛門他宛)に「其浦組中山焼候事、当年より堅無用二候、其子細者山しけらす(繁らず)候ヘハ、いわし(鰮)寄不申候旨聞届候」との記述がある。つまり、津久見浦の山での焼畑、湾内の小島の草木の伐採などを固く禁じたが、その理由は「山しげらす候へば、いわし寄り申さず候」ということを聞き及んでいるからだという。毛利高政は1604年にはイワシの重要性を認識していた。
また、1897年(明治30年)制定の森林法で保安林として魚附林が設定されたのは江戸中期から明治初期までのサケ漁の振興策との関係があるとの指摘もある。
中・近世にはイワシは魚肥として内陸部に大量に投入された。サケは海の物質を内陸部に運ぶ「運搬者」でもある。海由来物質の内陸部への移動を図るために、日本近世の魚附林思想が展開したとも考えることができる。


琵琶湖沿岸域における自然修復・再生の課題−沿岸域管理の視点から−
                                                   秋山 道雄(滋賀県立大学)

2002年に自然再生推進法が成立して、自然の修復や再生に対する関心が高まっている。今後、こうした方向での事業が展開するケースは順次出てくる可能性があるが、自然の修復や再生はこれまでの事業とは異なった性格をもっている。それを具体的に考察するため、本報告では琵琶湖沿岸域を事例に取りあげた。
沿岸域の修復や再生を考えていく際には、その生態的な構造や機能が大きいよりどころとなる。そこで、沿岸域をひとつのエコトーン(移行帯)とみることは、その性格を把握するうえで重要な意義をもつことになろう。エコトーンの特徴を環境保全につないでいくためには、まず、沿岸域における自然生態系の成立プロセスとその性格を明らかにする必要がある。無機的自然のプロセスがどう展開したか、そこに生物がどう介在したかをおさえたうえで、人間の活動がエコトーンにあたえた影響を捉えていく。陸域と水域の接点にあるエコトーンは人間の活動の場としても重要な意味をもっていた。それだけに、沿岸エコトーンには長い人為的改変の歴史がある。
本報告では、こうした認識を前提として表題のテーマを考察していく。


地域再生の視点からみた水環境形成の課題と展望       足立 考之(内外エンジニアリング株式会社)

20世紀が失った里山・里地や湿原、河川などの昔の姿を取戻すといった原風景復元の視点からみても、自然再生をめぐる動きは、生物の多様性重視だけでなく、まちづくりや地域再生の大きな原動力となって、盛り上がりを見せている。また、水と環境をめぐる諸問題は、都市、農村、森林、河川、沿岸域など個別の領域を超えた多様な広がりをもち、「流域圏」という発想をもとに水循環構築への新たな模索がはじまった。これらの動向を俯瞰しながら、本論では、生活、産業、環境維持、文化など「水の多様な価値」を検証するとともに、水環境を地域資源として活用した「水辺都市再生」や「農山村地域の環境創出」などの計画検討事例をもとに、「水と人のかかわり」の視点から環境再生のあり方について言及したい。


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