2005年度 研究大会

 

 2005年度研究大会を下記の要領にて開催いたしますので、ご案内申しあげます。当初は、岐阜県下呂市において、森林保全のフォーラム、シンポジウムとセット開催を予定していましたが、その後の状況変化により例年と同様の独自開催となります。

[研究大会] テーマ:水と環境教育

今年度の研究大会は、「水と環境教育」をテーマに開催します。
 2004度研究大会では、「水循環と自然再生」が議論され、その視点に地域や、自然生態系の重視が底流にあります。今回は、更に環境問題の原点に返り、次世代の担い手、人材育成のあり方を取り上げさまざまな角度から、日ごろの研究者、教育者として環境問題に関わってこられた現場に焦点を当てて議論する予定です。水政策に担い手、循環型社会への人材育成とその方向を、観光問題、環境施策の現状から、問題点と課題、展望をさぐることがねらいです。ぜひ、多くに参加者の日ごろの経験を交えて、実の有る議論、有意義な実践例の交流が期待されています。

水資源・環境学会研究大会事務局

    [大会会場] :ラクトスポーツプラザ コミュニティールーム
              住所 〒607−8080京都市山科区竹鼻竹ノ街道町91ラクトB 6階
              JR山科駅前・中央口を出て南 再開発ビル内)
              電話:075−501−3377  FAX:075−501−3301

    
[大会日時] :200565日(日) 100016:30  研究大会・総会
                           17301900  懇親会


 [研究大会プログラム]
  1000     開 会

 第1ステージ 研究発表
    10101035 北海道に見る「植樹活動」から「造林事業」への展開―厚岸町の事例から   川辺みどり  東京海洋大学
    
    10351100 環境分析用産業連関表の作成〜滋賀県を例として〜               吉田徹、林周 (財)滋賀県産業支援プラザ
    
    
11101135 琵琶湖逆水灌漑域における水系意識の再編の可能性               今田美穂 総合地球環境学研究所

    
    11351200 持続可能な交通計画推進における市民社会の役割カナダ、バンクーバー都市圏におけるNGO,BESTの事例から―  古川智美 

    12001300 昼 食
    13001330 総 会


 第2ステージ 基調講演とパネルディスカッション「水と環境教育」


    13301430  基調講演 
                   「持続可能な社会づくりと環境学習」 千頭  聡(日本福祉大学)


    144016:30  パネルディスカッション
                    司会、コーディネーター:土屋 正春(滋賀県立大学)
                    パネラー:千頭 聡    (日本福祉大学
                          槇村 久子   (京都女子大学)
                          若菜 博    (室蘭工業大学)
                          若井 郁次郎 (大阪産業大学)
                 *各パネラーから現状と問題提起をした後、パネラー、フロア−等からの意見交換、討論に入る。
    
    1630       閉 会
    17301930 懇親会



― 講演・発表要旨 ―

基調講演

「環境学習と地域社会」千頭  聡(日本福祉大学

 平成15年7月に「環境保全活動の増進及び環境教育の推進に関する法律」が制定された。また、2005年からは「国連持続可能な開発のための教育の十年」がスータトしている。
 これらの動きはとりもなおさず、持続可能な社会を形成していく上で、環境教育・環境学習が欠くことのできない必要条件であることを意味している。
 今回の基調講演では、千頭が関わっている環境学習にかかわるいくつかの事例をまず取り上げたい。具体的には、環境省こどもエコクラブの発祥の地である西宮市で、こどもの環境活動を地域全体で応援する仕組みを運営しているNPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)の活動、市民・NPO・事業者・行政・大学が協働して名古屋市民全体の環境学習と環境保全活動を底上げしていこうという「なごや環境大学」プロジェクト、さらには今年7月にアジアで初めて開催される国連環境計画主催の「世界こども環境サミット」やその他の事例をとりあげ、これらの活動を通じて、環境学習を通じて地域社会を変革していくために、何が鍵となるかを皆さんとともに考えていきたい。


研究発表


北海道に見る植樹活動」から「造林事業」への展開―厚岸町の事例から  川辺みどり(東京海洋大学)

 漁業者による植樹は1990年代に活発になり、2005年現在では日本全国で展開されている。活動例が頭抜けて多い北海道で普及した背景として、排他的経済水域200里発効に伴い北太平洋遠洋漁業が撤退を余儀なくされ、沿岸漁業資源への依存性が増したこと、ところが、沿岸域では開発が進み環境劣化に対する懸念が増大したことが指摘されている。だが、北海道漁業者が森林を尊重する歴史は長く、それが活動普及の素地をなすとも考えられる。また、活動が継続し得た背景として1990年代から現在にいたるまで少なからぬ行政の経済支援、特に補助金があったことは見逃せない。定着した漁民の植樹活動が、農業・林業に比べて交流の機会が少ない市民地域住民だけではなく首都圏住民もと漁業者とが接する機会となっている例もある。ここでは、一部の青年漁業者と家族たちが始めた植樹活動を、町や市民団体が支援し、広範な人々を巻き込みながら発展した厚岸の事例について述べる。


環境分析用産業連関表の作成〜滋賀県を例として〜  吉田徹、林周(財団法人 滋賀県産業支援プラザ)

 近年,資源循環型社会形成を進める重要性が高まっている.すなわち,従来の貨幣ベースでの経済活動の把握に加えて,廃棄物や汚染物質も含めた物質ベースの産業間,地域間のフローを把握することが求められている.しかし,その作成には,生産量や廃棄物量は地域差があり,全国値からの推計が困難である.このためには,マクロ経済データからマテリアル・フローを作成することが困難であるため,ミクロのデータから積み上げることが求められているおり,コンピュータを利用したデータベース構築と応用技術の発展がこのことを可能にしている.
 
本研究では,対象地域として,琵琶湖という閉鎖水域を持ち,また工業が主要産業である滋賀県を取り上げ,地域内全産業のマテリアル・フローをマクロ経済データからの推計ではなく,各種統計データの積み上げによって作成し,事業所単位での廃棄物residualemissions(産業廃棄物・CO2・水質汚濁物質)データと組み合わせた地域内環境分析用産業連関表を作成する.


琵琶湖逆水灌漑域における水系意識の再編の可能性
  今田美穂(総合地球環境学研究所

 琵琶湖周辺の平野部では、戦前から田用水確保のために、小規模に琵琶湖から取水していたが、昭和47年の琵琶湖総合開発を契機に、琵琶湖から大規模に揚水を行い、パイプラインで圃場一筆一筆に配水することが可能になった。さらに農家の兼業化もあいまって、農地の管理が粗放になり、水使用量が増大し、昭和50年代後半ころから農業排水による琵琶湖への負荷が問題視されている。 このようななかで、農家の節水行動を促す施策として、滋賀県下のいくつかの土地改良区で、分水工ごとに水使用量に応じた水代徴収が試みられている。地元の合意のもとに、水利用の新たなルールを導入することによって、負荷削減効果はもちろん、一度失われた水系意識が再編されうるのか、土地改良区へのヒアリング結果から推察したい。


持続可能な交通計画推進における市民社会の役割
カナダ、バンクーバー都市圏におけるNGO,BESTの事例から
  古川智美

 本研究の目的は、持続可能な交通システム(EST)のあり方とその実現のための方策について市民社会の役割に注目して検討することである。事例として、カナダ、バンクーバー都市圏(GVRD)EST推進のために行政や企業、地域住民と共同で取り組んでいるNGOBESTBetter Environmentally Sound Transportation)がEST推進のための活動を進めていく上で直面した機会(Opportunities)及び問題点(Constraints)について調査した。事例研究の手法は、ヒアリング(BEST職員及び理事)、及び関連資料(BEST出版物や活動報告、GVRD地域・交通計画書及び、地域の新聞記事等)の分析による。BESTの経験から、EST推進のためにはどのような政策や制度の構築が必要なのか、またその推進のために市民社会がどのような役割を果たすのか、考察した。