2006年度 水資源・環境学会研究大会のご案内 (2006.4.14更新)


大会テーマ 「地域づくりと水循環」   ポスター(PDFファイル)

  【大会日時】2006年6月3日(土) 10:00〜17:00

  【大会会場】aiinaアイーナいわて県民情報交流センター8F会議室(802・803) 地図
            (〒020−0045 岩手県盛岡市盛岡駅西通一丁目7番1号)
            TEL 019 − 606 − 1717 (総合案内)  FAX 019 − 606 − 1716

  【岩手大学現代GP主催特別行事】
        2006年6月4日(日)8:30〜16:00 バスロータリー出発(県内)


【 研 究 大 会 プ ロ グ ラ ム 】

 6月3日(土)

 セッション1 (地域づくりと環境再生)  803会議室  座長 : 若井 郁次郎 (大阪産業大学)

   10:00〜10:25  青森・岩手県境大規模不法投棄事件への対応  ○滝川 義明 (岩手県産業廃棄物不法投棄緊急特別対策室長)

   10:25〜10:50  環境再生事業と社会経済的評価―青森・岩手県境産廃不法投棄現場を事例として―  ○笹尾 俊明 (岩手大学)

   10:55〜11:20  岩手・青森県境産業廃棄物不法投棄問題に対する環境経済評価  ○南 正昭 (岩手大学)

   11:20〜11:45  岩手大学における産廃不法投棄現場の環境再生への取り組み  ○中澤 廣 (岩手大学)

   11:45〜12:10  地下水汚染に対する法的救済の現状と課題―廃棄物処理施設をめぐる差止裁判を中心として―  ○宮崎 淳 (創価大学)

 セッション2 (地域づくりと環境教育) 802会議室  座長 : 玉 真之介 (岩手大学)

   10:00〜10:25  清らかな水 豊かな森を 次の世代に  ○伊藤 利巳・千葉 健一 (高松の公園と親しむ会会長/事務局長)

   10:25〜10:50  賢治の動物たち―賢治生態学ことはじめ―  ○吉田 勝一 (岩手大学)

   10:55〜11:20  Economic Growth in Poverty-Environment Nexus: Evidence from Bangladesh  ○Anupam Saha (滋賀大学)

   11:20〜11:45  陸-海の物質循環と江戸期から現代までの魚附林思想  ○若菜 博 (室蘭工業大学)

   11:45〜12:10  環境容量を意識した住民による環境管理の形成について―沖縄県座間味村を対象として―  ○三輪 信哉 (大阪学院大学)

     ※セッション1とセッション2は時間並行

   12:20〜12:50  総会(水資源・環境学会)803会議室

       〜13:10           ― 昼 休 み ―

 セッション3 (地域づくりと水環境)  803会議室  座長 : 佐藤 祐介 (岩手大学)

   13:10〜13:15  [挨拶]  ○千葉 則茂(地域連携推進センター長)

   13:15〜14:00   [基調講演]人々の生活をつなぐ北上川   ○平山 健一 (岩手大学学長)

   14:00〜14:25  北上川河口域のヨシ原をめぐる環境学   ○牧 陽之助 (岩手大学)

   14:25〜14:50  岩手・鹿妻穴堰土地改良区における水源林の経営展開  ○泉 桂子 (森林総合研究所)

   14:50〜15:15  ダム・河口堰による水資源開発の終焉―21世紀の水資源政策の展望―   ○伊藤 達也 (金城学院大学)

   15:20〜15:40            ― 休 憩 ―

 セッション4 (総合討論)  803会議室  座長 : 伊藤 達也 (金城学院大学)

   15:40〜17:00  [討論]   パネリスト : 若井 郁次郎 (セッション1)
                           玉 真之介 (セッション2)
                           平山 健一 (セッション3)
                           牧 陽之助 (セッション3)

              [挨拶]  ○菅原 正孝(水資源・環境学会会長)

   17:30〜                ― 懇 親 会 ―(盛岡市内)




【 関連特別行事:岩手大学現代GP主催 現地環境研修会(環境・伝統技術・知財の接点を求めて) 】

 6月4日(日)

   8:15 岩手大学教育センター前 

   8:30 盛岡駅西口バスローターリー (アイーナ向かい)

   9:30 旧松尾鉱山浄水施設見学(松尾八幡平)

   11:30 盛岡駅西口バスセンター 

     (昼食・各自)

   1:00 石鳥谷(酒蔵)見学

   3:00 花巻空港

   4:00 盛岡駅西口バスセンター

   4:15 岩手大学教育センター前

 *参加料は無料です(定員40名)。希望者は事前に申し込んでください。

発  表  要  旨

【セッション1】(地域づくりと環境再生)座長 : 若井 郁次郎 (大阪産業大学)

「青森・岩手県境大規模不法投棄事件への対応」  滝川 義明(岩手県産業廃棄物不法投棄緊急特別対策室長)

  岩手県二戸市と青森県田子町にまたがる原野(27ha)に、八戸市の産業廃棄物処理業者が両県分併せて約87万m3(岩手県側約20万m3、188千t)もの産業廃棄物を不法投棄。その規模が全国でも最大級であるとともに、把握されている排出事業者の殆どが首都圏に所在するという特徴。不法投棄された産業廃異物は燃え殻、汚泥、廃油、RDFなど多種多様であり、中には有害物質を含むものもあるほか、一部には医療系の廃棄物も混入している。
 この対策として、岩手県は平成15年度から代執行による撤去事業を国の支援を得ながら開始。周辺環境水域への汚染拡散防止に配慮しながら、平成24年度までの原状回復を目指している。併せて排出事業者も含めた責任追及にも取組んでいる。

「環境再生事業と社会経済的評価―青森・岩手県境産廃不法投棄現場を事例として―」  笹尾 俊明(岩手大学)

 青森・岩手県境の産廃不法投棄現場では、現在、廃棄物の撤去と汚染土壌の処理を内容とする原状回復事業が行われている。この事業は不法投棄現場を周辺の生活環境に支障を生じない状態にするための事業であり、事実上、現場を更地の状態にするまでの事業である。一方、現場の自然環境を取り戻したり、跡地利用したりといった環境再生については、まだ具体的内容が決まっておらず、今後検討すべき課題である。 本研究では、県境不法投棄現場における環境再生について、人々がどのような意識を持っているかを環境評価手法の1つである選択型実験により分析する。具体的には以下の4点、@誰が事業主体となるか、Aどのような内容の環境再生事業を行うか、B将来にわたって現場とその周辺の環境水準をどのように保つか、C原状回復事業後の環境モニタリングをどれだけの期間行うか、に注目して、環境再生事業の社会経済的評価を行う。

「岩手・青森県境産業廃棄物不法投棄問題に対する環境経済評価」  南 正昭(岩手大学)

 平成12年に発覚した岩手・青森県境での大規模な産業廃棄物不法投棄に対し、原状回復のための事業が現在進行中である。本論文では、投棄現場からの距離および都市規模の異なる岩手県内の3つの市町村(盛岡市、九戸村、沢内村(現:西和賀町))を対象に、原状回復への支払意志額を尋ねるCVM調査を実施した成果をまとめた。調査の結果から、支払意志額は都市部である盛岡市において最も高いこと、必ずしも現場からの距離によらないことなど、地域による相違がみられることを明らかにした。またこれらの成果をもとに、今後の原状回復事業の遂行や同様の事件の再発防止に向けた制度づくりを念頭に考察を行った。

「岩手大学における産廃不法投棄現場の環境再生への取り組み」  中澤 廣(岩手大学)

 岩手大学は、地域貢献特別支援事業(文科省、平成14〜16年度)の事業の1つとして、平成15、16年度に「国内最大廃棄物不法投棄サイトの環境再生システムの開発」事業を行った。また、平成17年度は、岩手大学独自の事業である地域連携促進事業の一つとして「大規模廃棄物不法投棄サイトの環境再生への取組み」事業を行った。これらの事業活動とその成果について報告する。

「地下水汚染に対する法的救済の現状と課題―廃棄物処理施設をめぐる差止裁判を中心として―」  宮ア 淳(創価大学)

 1990年代から、廃棄物処理施設の建設または操業をめぐって、周辺住民等による生活環境の保全を求める紛争が多発し、そのいくつかは訴訟にまで発展している。このような訴訟において、裁判所は、水質汚濁による健康被害の高度の蓋然性が認められる場合には、その建設または操業の差止めを容認する傾向にある。当該施設の建設、操業の差止めを認める法的根拠としては、様々な学説があるが、近時の裁判例では人格権を根拠とするものが主流となっている。なかでも、適切な質量の水を確保する権利を、人格権の一種としての「浄水享受権」と称して、差止請求の法的根拠として判示する判決が出現している。本報告では、このような判例の動向を紹介し、浄水享受権の性質を解明することにより、周辺住民の生活環境を保全する法的方策を考察していきたい。


【セッション2】(地域づくりと環境教育)座長 : 玉 真之介 (岩手大学)

「清らかな水 豊かな森を 次の世代に」  伊藤 利巳・千葉 健一(「高松の公園と親しむ会」会長/事務局長)

 高松の池は、明治時代から市民のオアシスとして、春は桜、夏は水泳、秋は茸狩り、冬はスケート等々四季折々に親しまれてきました。昭和32年には、都市計画法により「高松公園」として総面積44.3ヘクタールの都市公園として指定されました。
 しかし、この盛岡市民の憩いの場である「高松の池」は、生活廃水の混入などにより汚濁が進み、春先には大量のふなや鯉が死んで浮き上がり、夏場には悪臭さえ漂うようになりました。森もニセアカシアが繁茂し、加えて倒木などにより人を寄せ付けない状況となっていました。「清らかな水 豊かな森を 次の世代に」そんな熱い願いをもって、2000年4月、高松地区を中心とした有志住民による「高松公園と親しむ会」が発足しました。この6年の歩みを紹介いたします。

「賢治の動物たち−賢治生態学ことはじめ―」  吉田 勝一(岩手大学)

 賢治の詩篇「オホ−ツク挽歌」は1923年8月日に樺太(サハリン)の栄浜(スタロドウプスコエ)で作られたものである。演者は2004年の同時期に栄浜の自然環境を探索し、詩に出現する動植物のほとんどを確認した。80年を経て確かに町の様子は大きく変貌していたが自然環境は往時のままであることを知ることができた。彼の作品中の動物を拾い上げることによって当時の里地環境をいかに復元できるかを試みた。まず賢治童話全98編と詩集『春と修羅』に出現する動物の頻度分布を調べ、その傾向を検討することから始めた。また、いく編かの童話と詩の中で動物がどのような役割を演じているかについて生態学的アプロ−チを試み、自然環境に対する彼の視点を探ってみた。

「Economic Growth in Poverty-Environment Nexus: Evidence from Bangladesh」   Anupam Saha(滋賀大学)

During the past few years international development agencies have been highlighting the importance of poverty environment nexus. The poverty environmental nexus is set of mutually reinforcing link between environmental damage and poverty. There is another important link in line with above relationship: the environmental damage and economic growth. Keeping aside the issue of environment, link between the poverty eradication and economic growth has attached importance to ensure sustainable development. In the nexus poverty reduction and environmental protection are complimentary goals. The debate in the nexus concept has emerged from the early model of Environmental Kuznet’s curve, which provides a scenario that the early stages of development are unavoidably marked by the conflicts between poverty reduction and environmental protection. Extensive research has been conducted in this connection during 90s and numerous studies have suggested that environmental damage can have particular significance for the poor. Recent poverty assessment conducted in 14 developing countries has reconfirmed the common perception that environmental quality is an important determinant of their health, earning capacity, security, energy supplies and housing quality (Brocklesby & Hinshelwood, 2001). It is often observed in the rural studies that poor peoples’s economic dependence on natural resource makes them particularly vulnerable to environmental degradation (Akber 1999; Cavendish 1999, 2000; Kape 1999; Reddy & Chakravarty 1999). In the inverse case, poor household themselves increase environmental damage. Halden 1996 opted for impact of poverty on environment. In either way poverty is perceivably undesirable. This study will search for a nexus between poverty and environment in context of a particular country, Bangladesh. Methodological approach has been borrowed from Dasgupta, 2005 and Gallup, Radelet, Warner, 1999. Methodology consists of manly two way approaches. First approach will find a link between economic growth and poverty and secondly it will approach to the link between poverty and environment. Simple OLS and statistical inference will be used to illustrate the nexus. Independent variables for the OLS are income of the poorest quintile, schooling year, life expectancy, tropical location, land lock, openness, government savings rate, public expenditure on health and education. Second approach is mainly formed on single variable model. Dependent variables used for these models are of environmental components usually degraded by the socio-human activity. Among those, deforestation, fragile soils, access to clean water and sanitation and population depend on forest resource to meet their energy needs. The lack of data for environmental study is a great backlog and actual picture may not be laid down because of insufficient and unauthenticated data may blur the result. Even though. this study may help inspire the government and researchers of this field to carry out accumulating authenticated data and will pave the way for further research.

「陸-海の物質循環と江戸期から現代までの魚附林思想」  若菜 博(室蘭工業大学)

 教科書(小学校社会科、中学校国語等)等で漁民たちの植樹活動が記述されており、そこでは「森から出る栄養分が海を育てる」というイメージが強調されている。しかし、北海道南部の小学生は、「森からの栄養分が海に注ぎ込んでいるだけなら、森は”損する”ばっかりだ」というまっとうな指摘をした。実際、江戸時代初期の魚附林の開始は、当時重要な産業資源となっていたイワシ漁業育成という動機があり、近世日本ではイワシは広く魚肥として大量に内陸に投入された。また、1700年代の盛岡藩・村上藩の魚附林はサケ種川制と関連があったが、サケは海の物質を内陸部に運ぶ「運搬者」でもあり、陸の樹木がサケの死体を肥料として成長することが近年の研究により明らかになってきた(カナダ、日本等)。江戸期から現代までの日本列島における魚附林は、「森(陸)が海を育てる」だけではなく、「海が森(陸)を育てる」ことを含めた、森(陸)と海とのの双方向的物質移動の両局面を持ちながら、発展してきた。なお、陸-海の物質循環を見るとき、海の中での立体的な物質移動(深層海流、表層海流、沈降と湧昇)も視野に入れることが必要である。

「環境容量を意識した住民による環境管理の形成について―沖縄県座間味村を対象として―」  三輪 信哉(大阪学院大学)

 那覇から高速船で1時間の距離にある座間味村は、良好なサンゴ礁が残されており、ダイビングを中心とした観光業の発展が期待されている。戦後の自給自足的な時代から現代まで、人々の生活レベルの向上とともに、水の大量消費やゴミ量の増大など、島のもつ環境容量を越えての活動が深刻な課題となりつつある。島の容量を意識せざるを得ない環境下で議論されつつある環境管理の合意形成のありかたや、その方向性について報告したい。


【セッション3】(地域づくりと水循環)座長 : 佐藤 祐介 (岩手大学)

[基調講演]「人々の生活をつなぐ北上川」  平山 健一(岩手大学学長)

 岩手県岩手町御堂に源を発し宮城県石巻市に至る北上川は、地域社会と深い関わりをもつ身近でかけがえのない「母なる川」です。北上川の概要と流域社会の歴史を振り返りながら、その恩恵と水害について、特徴を概観し、さらに北上川が持ついくつかの課題を挙げ、それらに対する取り組みの現状について述べたい。特に、最近の河川行政の大きな変化や住民による上下流交流、行政と住民の連携について、NPO活動の経験や自らの将来展望を踏まえて紹介する。

「北上川河口域のヨシ原をめぐる環境学」  牧 陽之助(岩手大学)

 北上川河口域に広がるヨシ原を中心とした地域で、自然・社会・文化の結びつきをシステマチックに理解しようとした研究例を紹介する。この研究では四つの課題を掲げ、それぞれの専門領域の立場から研究を進めた。四つの課題とは、第一に「ヨシ原生態系は生物学的化学的にどんな機能を持っているのか」であり、第二には「地域社会(河口域と上流域)の人々はヨシ原を具体的にどのように受け止めているのか」であり、第三は「固有の歴史的文化的背景をもつ北上川河口域ヨシ原の保全策とはどのようなものであるべきか」、第四は「ヨシ原をひとつの資源として、北上川流域の中でどのように管理すべきか」である。参加した11名の研究者の専門領域は、動物・植物・群集生態学、土壌学、分析分離化学、環境社会学、環境経済論、科学技術史、環境文化論、環境法政策論、である。

「岩手・鹿妻穴堰土地改良区における水源林の経営展開」  泉 桂子(森林総合研究所)

 研究対象とする鹿妻穴堰土地改良区は岩手県盛岡市南部、 同紫波郡矢巾町、紫波町に位置する。現在組合員約5,000人、 農地面積約4,800haを擁し、岩手県内で現在も五指に入る土地改良区である。鹿妻穴堰土地改良区の水源林は雫石川の支流、鶯宿川流域にあり、面積233haである。鹿妻穴堰の取水口上流の森林面積は約60,000haに及ぶため、水源林の占める割合はきわめて小さい。鹿妻穴堰土地改良区の水源林は1927年から1961年の間に少しずつ買い増されたもので、現在の人工林率は74%である。現在までのその経営状況を文献調査により実証的に解明する。

「ダム・河口堰による水資源開発の終焉−21世紀の水資源政策の展望−」  伊藤 達也(金城学院大学)

 20世紀の水資源政策は増加する水需要に対してどのように対処するかをめぐって展開してきた。特に高度経済成長期に発生した旺盛な都市用水需要対策として建設されたダム・河口堰は、わが国における都市への人口集中、産業集積を支える貴重な生活基盤・産業基盤として機能してきた。しかし、21世紀を迎えて、ダム・河口堰をめぐる状況は大きく変化した。現在、建設の進むダム・河口堰を支える根拠は大きく後退し、脱ダム・河口堰を展望する状況を迎えている。
 本発表ではまず水資源開発・利用の現状を確認した上で、今日なおダム・河口堰の建設が続く理由を明らかにし、水資源政策においてダム・河口堰でなくてはならないと考えられている理由とその問題点を明らかにする。その上で、21世紀を迎えた現在、ダム・河口堰ではなぜダメなのかを述べ、最後に21世紀の水資源政策を展望する。


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