2007年度 水資源・環境学会研究大会のご案内


大会テーマ「水源森林管理と水問題」

【大会日時】  2007年6月2日(土) 9:50 〜 17:00 研究大会
                      17:30 〜 19:00 懇親会

【大会会場】  キャンパスプラザ京都(大学コンソーシアム京都)
           〒600-8216 京都市下京区西洞院通塩小路下ル 電話:075-353-9111

午 前 : 2階 第3会議室
午 後 : 2階 第3演習室
 ○午前と午後、会場が変わります!

【水源森林視察エクスカーション】 2007年6月3日(日)9:00 〜 14:00 JR大津駅集合(南改札口を出て下さい。)


 生活に不可欠な水の供給源は雨であり、それを熟成させるのは森(木と土)である、と意識している都会人は意外に少ないようです。これは水に対する危機です。国連の人口推計によれば、2007年に地球上で都市に住む人口が地方のそれと同じになり、人口増の傾向より人類史上、初めて人口分布の逆転現象が起こるとされています。とすれば、渇水には敏感であっても、安全な水供給のルーツとしての水源森林に鈍感な人口が国内外で増えると予想されます。

 また、国内では、河川を線的な捉え方から脱却し、流域という面的、立体的な見方で総合的に理解し、水源や水環境、森林の多様性・公益機能を再生し保全する方向に転じています。これは、長期的に見れば、投資効果が小さくなっている河川整備・ダム関連の公共投資を節減し、水浄化・利用にともなうコストを低減することにもなり、流域圏の社会的便益(費用)の改善、健全で持続力のある水循環を促すことになるといえます。

 こうした背景より、雨が最も早く地上に届き、流域の頂点にある水源森林の今世紀での姿や管理を考えようと、次のように企画しました。

 水は人間や生態系、風土にとってかけがえのないベースです。その水が揺籃期として過ごす水源森林をテーマに、「緑のダム」機能を中心に水循環や水資源、森林保全、森林景観など多面的な見方や考え方を総合的に論じ、新しい国土形成の戦略的視点から水源森林の保全とその機能形成の本質に迫ろうというのが、この研究大会の目指すところです。

 多様な専門分野からなる本学会の会員のみなさまと斬新な視点よりともに論じ、考えたいと思います

【 研究大会プログラム  6月2日(土) 】

9:30 受 付

9:50 開会挨拶

◆自由論題◆

セッション1 合意形成プロセスと主体の役割    座長 : 伊藤 達也(金城学院大学)

9:55〜10:20 多主体が連携した自然保護におけるコーディネーターの役割に関する研究−高島市うおじまプロジェクトを事例として−
            ○新玉拓也(名古屋大学大学院)・秋山道雄(滋賀県立大学)・廣瀬幸雄(名古屋大学)

10:20〜10:45 公共事業の政策評価と政策形成過程への市民参加 ○真下淑恵(高崎経済大学大学院)

セッション2 農と自然の総合マネジメント    座長 : 秋山 道雄(滋賀県立大学)

10:45〜11:10 棚田の保全と活用に向けた維持管理体制に関する研究 ○保田祐子(立命館大学大学院)

11:10〜11:35 市民が見た天竜川流域における海岸侵食とダム堆砂 ○田渕直樹(NGO・ATT流域研究所会員)

11:35〜12:00 大気から森林への降下負荷量の評価 ○中澤 暦・國松孝男(滋賀県立大学)

12:00〜13:00 昼休み

◆テーマ論題◆

セッション3 水源林保全と水浄化メカニズム    座長 : 野村 克巳(京都市)

13:00〜13:30 森林の水質汚染 ○國松孝男(滋賀県立大学)

13:30〜14:00 森林保護と水浄化(Protecting the forest as a hopeful policy for cleaning water)○相 習軍(中国遼寧省企業発展協会)

14:00〜14:30 山梨県における林野入会権と水道水源林 ○飯岡宏之(横浜市立大学大学院) 

14:30〜15:00 休 憩

セッション4 水源林と水循環マネジメント    座長 : 松岡 勝実(岩手大学)

15:00〜15:30 森林保護と水循環(Forest Water Circulation) ○付 宝山(中国遼寧省企業発展協会)

15:30〜16:00 都市水源林管理の国際比較−日本、アメリカ、カナダを事例として− ○高橋卓也(滋賀県立大学)

16:00〜16:30 総合討論

16:30〜17:00 総 会

17:00             閉会挨拶


【 水源森林視察エクスカーション  6月3日(日) 】

集合日時 : 6月3日(日)9:00(時間厳守)

集合場所 : JR「大津駅」集合(南改札口を出てください。琵琶湖の反対側です。)

視察経路 : 瀬田の唐橋(近江八景)
          ⇒ 南郷洗堰遺構・瀬田川洗堰(琵琶湖の水位を管理)
          ⇒ アクア琵琶(琵琶湖・淀川水系の治水・砂防の展示)
          ⇒ 田上山(鎧堰などの砂防ダム、山腹緑化工)

解散場所 : 京阪電車「石山寺駅」

解散時間 : 14:00(予定)

参 加 費 : 傭車費用(ガソリン代を含む、参加者人数による比例負担)


研究大会発表要旨

【セッション1】 合意形成プロセスと主体の役割

    多主体が連携した自然保護におけるコーディネーターの役割に関する研究−高島市うおじまプロジェクトを事例として−
     新玉拓也(名古屋大学大学院)・秋山道雄(滋賀県立大学)・廣瀬幸雄(名古屋大学)
 現在,自然保護をはじめとする様々な場面において多主体の連携が必要とされており,連携を構築するコーディネーターが必要とされている.しかし,実際にコーディネーターが数多く活躍する状況には至っておらず,コーディネーターの不足が課題となっている.
 そこで,本研究では,コーディネーターの重要性に着目し,滋賀県の自然保護におけるコーディネーターの役割および新たなネットワーク形成の可能性を高島市うおじまプロジェクトを例に取り考察する.
 事例として取り上げる「高島市うおじまプロジェクト」は、特徴として・国土交通省や農業関連団体を含み,関係主体が10団体を超える.・絶滅危惧種の生息や産卵が確認されているなど,生態学上重要な位置をしめている.・沿岸植生帯の復元と農業濁水削減,地域の活性化,魚の生息調査など,様々な取り組みが相互につながりあっている複合性.
 これらはプロジェクトのうおじまという言葉に表されるように,大きく見れば魚を指標とした自然保護活動である.魚を指標としているため産卵数や魚類相調査など生態学的な評価は行われているが,人と人のつながりに着目したソーシャルキャピタルの観点から研究している事例はほとんど見られない.この事例は,継続中の取り組みであり,これに関連して幅広い連携が構築されていることから,本研究の目的に適した事例といえる.これからの滋賀県における自然保護における先進事例となり重要な知見を含んでいると考えられる.
    公共事業の政策評価と政策形成過程への市民参加   真下淑恵(高崎経済大学大学院)
 巨額な財政赤字が深刻な問題となり、行財政改革が進められる中で「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(政策評価法)が2002年4月から施行された。政策の評価を実施し、政策への適切な反映を図り、政策の評価に関する情報を公表し、効果的、効率的な行政を推進し、説明責任を果たすことを目的とする法律である。公共事業についても事前、事後、再評価などの評価が行われるようになり、政策評価の結果を予算配分の見直しにつなげることを期待された。しかしながら、2000年に642兆円であった国の債務残高は、2006年12月末には832兆円に達し、国、地方合計の債務残高は、1000兆円を越えている。
 本稿では、公共事業の政策評価がどのように行われ、政策形成過程の中で市民参加がどのように行われてきたか、望ましいあり方はどのようなものかについて実例に基づいて検証していきたい。

【セッション2】 農と自然の総合マネジメント

    棚田の保全と活用に向けた維持管理体制に関する研究   保田祐子(立命館大学大学院)

 近年棚田は、わが国農業の歴史的、文化的遺産として注目を集めている。代表的な棚田保全事業である棚田オーナー制度は、現在では、全国約70地区において取り組まれており、複数地域の先進的事例が報告されている。しかし一方で、オーナー制度の持続性を危ぶむ研究報告もなされており、棚田集落における都市農村交流のための手法はいまのところ開発途上であり、保全施策が完全な成功を収めているとはいえない。さらに近年では、多くの棚田を抱える中山間地域において、これまで地域資源を管理する共同体的機能を担ってきた集落そのものの維持が困難になってきているという深刻な局面を迎えている。今後は、棚田保全事業拡充のための手法を確立するだけではなく、集落を含めた地域社会を支えていたシステムそのものを見直し、再編することにより、棚田を良好に維持していくことのできる新たな管理主体を形成する必要がある。
 本研究では、島根県吉賀町柿木村大井谷棚田地区を対象に行った実態調査の結果をもとに、棚田のもつ多面的機能を生かし、都市との交流事業によって地域の活性化を図るための棚田保全システムの概念モデルを提示する。


市民が見た天竜川流域における海岸浸食とダム堆砂   田渕直樹(NGO・ATT流域研究所会員)
 2003年静岡県浜松市の中田島海岸が浸食されて中田島砂丘が破壊され、東海地震の津波災害が現実のものとなった。さて海岸浸食は21世紀の公害でで はないし、湘南海岸や赤江浜、九十九里海岸など全国で発生している。約30年前の1976年当時浜松市在住の84才の老人が、ダムによる河床低下と海岸浸 食を新聞に投稿している。一方専門家は70年代から90年代に掛けて遠州灘の海岸浸食についての調査・研究し、行政は五島海岸や竜洋海岸に離岸堤を建設し てきた。2006年春中田島地区の人々は3分の1が埋没した佐久間ダムを訪ね、ダム堆砂を中田島海岸に運んでくれたらと望み、浜松の海を守る会はダム堆砂 をダンプで五島海岸まで運んだ。海岸浸食の原因をダム堆砂と断言するのは拙速かもしれないが、天竜川と遠州海岸に於いては最大の原因であると言えよう。ダ ム堆砂の時代的責務は、中谷宇吉郎が警告した1950年代よりも悪化している。
大気から森林への降下負荷量の評価   中澤 暦・國松孝男(滋賀県立大学環境科学部)
 外部から森林への栄養元素の主な供給源は、大気降下物である。大気降下物は降雨と降下煤塵によって構成されるが、その量は地域・時間によって大きく変化する。しかし、その正確な測定法は確立されていないし、地域への正確な供給量の評価法も開発されていない。本研究では琵琶湖流域に設定した4地点での、10年以上にわたる長期のモニタリングデータを解析して、大気降下物の基本的性格を明らかにし、評価法について論じる。

【セッション3】 水源林保全と水浄化メカニズム

森林の水質汚染   國松孝男(滋賀県立大学環境科学部)
  奥山の渓流水が、大阪市内の河川よりも高濃度の窒素で汚染されている地域があることが、最近わかってきた。それが地質に由来する自然汚染であるのか、大気汚染による人為汚染であるのか、皆伐・植林・放置などの森林管理が原因であるのか、あるいは未知の要因が原因しているのか、今のところ不明である。私たちがこれまで20年以上行ってきた森林と大気降下物についての研究を紹介しながら、対策の必要性と可能性について考察する。
山梨県における林野入会権と水道水源林   飯岡宏之(横浜市立大学大学院)
 横浜は1888年に明治政府の招聘をうけたイギリス陸軍大佐のH.S.パーマーの設計によって、相模川の上流から横浜市内に給水したことによって近代水道発祥の地といわれる。その道志川は、現在でも横浜市水道局が相模川水系において唯一水利権をもつているが水量は全給水量の一割にも満たない。むしろ、百年ちかく道志村の3分の1を水源林として管理してきたことで、横浜市では環境施策のシンボル的な意味づけをされている。
 道志村が属する甲斐の国はもともと厳しい入会慣行によって、村落共同体が美林をまもってきたし、信玄堤などの卓越した治水にもつうじている。しかし、明治初頭の林野行政で、天皇領となったことは「山をかえせ」との村民の激しい反発をまねいた。山梨県はこれを利用して県に「下賜」させてしまい。さらに、その一部を東京、横浜に売却した。これは、すでに「入会権」をうたった明治法典からも問題があったといえる。
 今日、入会権はコモンズ思想、環境権に関わるキーワードであるが、区域内に他の自治体の水源林がある市町村にとっては自治性に関わる課題でもあることを忘れてはならない。

 【セッション4】 水源林と水循環マネジメント

都市水源林管理の国際比較−日本、アメリカ、カナダを事例として−   高橋卓也(滋賀県立大学環境科学部)
 国際的に比較した場合、上水道水源としての都市水源林の管理には多様性と共通点が見られる。とくに、管理方針の方向性、管理方針の決定のあり方には、各都市ごとに大きな違いが見られる。方向性としては、木材生産に対する積極的な姿勢から禁止措置にいたる幅広い違いが存在する。決定のあり方としては、専門官僚主導、政治主導、科学知識主導といった様々な類型がある。その一方で、各都市水源林に共通する傾向として、NGOの関与、生物多様性の重視などが見られる。このような相違点、共通点が何に起因し、どのような結果をもたらしたかについて、本報告では東京、バンクーバー、ビクトリア、ニューヨーク、シアトルなどの先進国各都市の事例を検証し、政治学的・組織論的な考察を行う。そのうえで、流域の水循環の管理のなかで水源林の管理が占めるべき役割について議論を行いたい。


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