2008年度 水資源・環境学会
研究大会のご案内
(2008.5.14更新)

研究大会テーマ : 「地球温暖化と水問題」


【大会日時】    2008年6月7日(土) 10:30〜17:00

【大会会場】    立命館朱雀キャンパス(JR二条駅前) 〒604‐8520 京都市中京区西ノ京朱雀町1 


 
 今年のノーベル平和賞は、アル・ゴア前アメリカ副大統領と国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による地球温暖化防止活動に贈られることになりました。環境分野では、オゾン層破壊の予測、砂漠化防止の植林に続く三度目のノーベル賞受賞です。いずれも人間活動によって引き起こされた地球環境問題に警鐘し続けてきた真摯な取り組みに対して評価されたものであり、水の惑星に住む人びとが共有して持続的に解決しなければならない人類的な問題です。
 IPCC第4次報告書が、地球温暖化の原因は人間活動にあるとほぼ断定したことによって、温暖化は仮説から現実へと一変し、人為的な気候変動がもたらす甚大な環境影響の恐れとその被害について、これまで以上に懸念されています。例えば、予測されている環境影響としては、生態系の破壊、干ばつや洪水、渇水、水不足などが予測されています。また、被害例としては、2005年8月、アメリカのフロリダ州マイアミを経て、ルイジアナ州ニューオーリンズ一帯を襲った大型ハリケーン・カトリーナによる大洪水がよく知られています。
 地球温暖化は、水の目から見ると、地球や地域の水循環やアクセスを変えることになり、これまで築かれてきた農業から生活にわたる水の文化・文明を崩壊させるかもしれません。また、水の取水や利用をめぐる水コンフリクトに起因する紛争や戦争の頻発が予想されます。さらに、想定外の不都合な水問題が起こりうることも考えられます。
 いま、不安にみちている水環境の将来を思い描くなかで、水の公平性、保全性および民主性という水の三原則にたって、次世代に向けた水資源・環境マネジメントや水資源・環境政策などについて、グローバルな水循環からローカルな水ストレスまで見据えて幅広く議論する意義は大きいと考えられます。

●研究大会プログラム●

10:00 受 付

10:25 開会挨拶

(座長:足立 考之)
自由論題
10:30〜11:00  中国の自動車リサイクル分野における現状と課題
            −再利用・処理技術に対する処理業者へのヒアリング調査− ○王 舟・小幡 範雄(立命館大学)

11:00〜11:30  琵琶湖お魚ネットワークがもたらした「もの」(仮) ○新玉 拓也(名古屋大学大学院)

11:30〜12:00  青森県尻屋崎砂防林と札幌農学校 ○若菜 博(室蘭工業大学)

12:00〜13:00  昼休み

基調講演
13:00〜13:50  低炭素社会シナリオ2050 ○佐和 隆光(立命館大学)

テーマ論題
13:50〜14:25  京都議定書とポスト2012 ○新澤 秀則(兵庫県立大学)

14:25〜15:00  地球温暖化と世界と日本の水問題 ○渡邉 紹裕(総合地球環境学研究所・研究推進戦略センター)

15:00〜15:10  休憩

15:10〜16:30  総合討論(座長:仲上 健一)

16:30〜16:50  総会(理事会)

16:50 閉会挨拶


●研究大会発表要旨●

中国の自動車リサイクル分野における現状と課題―再利用・処理技術に対する処理業者へのヒアリング調査−
王 舟・小幡 範雄(立命館大学)

 中国ではGDP成長によって2001年度から特に民生・個人の自動車の需要が増大している。中国政府は、2003年に「自動車産業発展政策」において、自動車動脈産業に関する改革活動を推進するとともに、自動車産業の資源効率化を目的とする中古者流通、解体処理業、リサイクルなどの静脈産業への整備に関する政策法規も打ち出している。
 しかし、現地調査によって、経済的利益を追求する処理業者は、リサイクル技術の遅れ問題とリサイクル部品の品質認証システムがない問題で、低水準のリサイクル部品再利用と違法の5大品目を利用して車両の再組立で経営を維持している現状が明らかになった。また、現場の作業員の環境保護意識の低さから不適正な処理を行い、廃車処理による環境汚染を多発することもよく見られる。本稿では、自動車処理業者へのヒアリング調査によって、リサイクルの実態と問題点を明確にし、中国における自動車リサイクル分野における解体・再生利用技術の課題を明らかにすることを目的とするものである。


琵琶湖お魚ネットワークがもたらした「もの」(仮)  新玉 拓也(名古屋大学大学院)

 琵琶湖お魚ネットワークは,市民や地域の団体が一体となって,琵琶湖流域のお魚調査に取り組むための枠組みで,2005年2月に「WWF・ブリヂストンびわ湖生命の水プロジェクト」や「琵琶湖博物館うおの会」などが中心になって立ち上げたものである.
 活動内容は,分布の調査をはじめ,自然観察会や勉強会,他団体のイベント協力,交流会の開催など多岐にわたっている.いずれの場合でも,魚の採集を行う場合は専用の調査マニュアルを使用し,データを事務局へ集めることになっている.2005年度には,この調査マニュアルを利用し流域各地の133カ所(平成18年4月調べ)でイベントが行われた.そして200団体・機関,2万人の方々が調査マニュアル通じて活動に参加した.
 この一連の取り組みによって,多くの成果がもたらされた.1つ目は膨大な生態学的データが集まり,保全地域や保全方法を考える重要な資料となったことである.2つめは参加者の心への影響である.魚を通した取り組みに参加することによって,多くの人が川や田んぼ,琵琶湖など自然を身近なものに感じるようになった.3つめは社会的なつながりである.ネットワークを通じ多くの人のつながりができ,地域の拠点となるような団体もたくさん見られるようになった.
 今回はこの3つめの社会的な観点から,今滋賀にできつつある各地の拠点を整理し,琵琶湖お魚ネットワークの果たした役割について考察を試みたい.


青森県尻屋崎砂防林と札幌農学校  若菜 博(室蘭工業大学)

 下北半島尻屋崎一帯は藩政時代は森林が繁茂し豊かな漁場を形成していたが,森林伐採による飛砂の害のため漁獲量が減った。1911年に尻屋の三餘会(漁師たちの青壮年会)を中心とした植林事業が始まり,それは1935年の県営事業に引き継がれ,1940年造林の一応の完成に至った。大正期の青森県での「下北郡産業計画」には,「本郡東方太平洋に面する海岸一帯は,茫漠たる砂地なるも以て太平洋より来る激烈なる潮風を防禦する為,此等一帯の地に植林を為し,魚附林となすと同時に,気候の緩和を図るは当面の緊急問題…。魚附の植栽を奨励するは,単に漁業上の利益を増進するのみならず,将来防風林・気候調節林且又水源涵養林として効用をも兼ね,従来顧みられざる農耕の業も之が為進展し,地方の利益を受くること甚だ大なるを信ず。」との森林の複合的機能に着目した記述がある。また,当時下北でも多数報告されていた「磯焼け」現象に対する遠藤吉三郎札幌農学校水産専門部教授の「水源地森林の荒廃」原因説(1903年)に対応する記述もある。太平洋戦争末期には松根油の採取が命じられ,造林した海岸林も被害を受けた。1947年青森県は北海道大学・東北大学・函館水産専門学校に対して県内の「水産資源調査」を依頼した。その調査団の一員が犬飼哲夫北大教授(函館水産専門学校長兼務)であった。犬飼は,同年12月から実施された調査(1952年まで継続)により,尻屋崎でのアワビ等の不漁は戦時中の松の伐採によることを指摘し,戦後の海岸林復活事業の一つの動因となった。


京都議定書とポスト2012
  新澤 秀則(兵庫県立大学)

 京都議定書は2012年までの排出量目標しか決めていない。本報告では,現在までの京都議定書の成果を評価し,2013年以降に関するさまざまな議論のレビューを行う。


地球温暖化と世界と日本の水問題  渡邉 紹裕(総合地球環境学研究所・研究推進戦略センター)

 最近,世界各地から,降水や河川・湖沼などの「異変」が頻繁に報道されるようになっている.これらは,地球温暖化の現れとして受け止められることが多い.IPCCの第4次評価報告書が2007年の春から順次発表され,温暖化自体がもはや避けがたい現実であるとの認識が広がって,それに伴う気候変動が,水や食料を含む身近な環境問題とリンクして意識されるようになり,改めて水循環や水資源への関心が高まっているようである.
 ここでは,世界と日本の水資源の需給などの概況と管理の課題を見直した上で,地球温暖化に伴う気候変動の影響の見通しを整理する.2008年7月の洞爺湖G8サミットでは,地球環境・地球温暖化対策が主要な議題の一つとなる見込みであり,地球規模の水循環・水資源が密接に関係した問題として,合わせて取り上げられることになろう.温暖化の問題を契機に,水資源を巡る課題を改めて検討する材料を提供してみたい.



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