1888年7月、日本の水力発電は杜の都・仙台でその歴史の1ページ目を刻みました。その流れをくむ発電所は、100年以上現役で稼動を続けています。JR仙台駅から仙台市交通局のバスで約25分。仙台市交通局の「川内営業所」に隣接するのが、現在は東北電力が管理する「三居沢(さんきょざわ)発電所」です。
写真1:1909年に完成した現在の建物(撮影:2017年6月。以降の写真も全て同じ)
写真2:「水力発電発祥の地」の石碑
当初は出力5キロワットの直流発電機でしたが、幾度かの改修を経て、現在は1910年から稼動するシーメンス社の交流発電機により、最大発電出力1,000キロワットとなっています。1888年、現在の仙台市交通局・川内営業所の敷地にあった「宮城紡績会社」(1884年に紡績事業を開始)が、仙台市内における電灯事業の開始を目的に、広瀬川の水を動力としていた織機の水車タービンに発電機をつけたのが始まりです。最初は紡績工場内の照明50基と、取水口のある山の頂上に1基設けたアーク灯を照らすために使われました。
写真3:宮城紡績会社があったことを示すプレート。
画面左上のバスの上に少しだけ見えているクロマツは、その当時からある。
ただし電灯事業に関しては「時期尚早」との意見が強く、7年後の1894年まで待つことになります。その間、1891年に京都の蹴上発電所が電灯用の配電を開始したため、現状ではこちらのほうが有名になってしまっている感もあります。
(記念館の方も、ぼやくような感じでおっしゃっていました)
1894年、発電機を30キロワットの能力のものに交換した上で、仙台市内における電灯事業が始まりました。当初の契約数は365灯でしたが、あっという間に増えていき、1895年の末には20万灯を超えていたそうです(書籍「東北の電気物語」より)。1900年、その電力に目をつけた人々によって、当時自転車の灯火用として需要があった「カーバイド」の製造が試みられ、見事に成功。のちに設立された「日本カーバイド商会」は、現在のチッソ株式会社のルーツとなっています。
1910年には、現在使われている発電機を収容した新しい建物が完成。1942年には現在の東北電力の母体となる東北配電株式会社に継承され、100年以上経った今も現役で稼動を続けています。
1988年、初代の建物があった場所に、「三居沢電気百年館」が開設。発電所の建物のうち、百年館と隣り合う部分の外壁はガラス張りに変更され、百年館から発電機を眺めることが出来ます。1999年、発電所の建屋が国の「登録有形文化財」に指定。2008年には発電機や関連資料が日本機械学会の「機械遺産」に。そして2009年には経済産業省の「機械遺産」の認定を受けています。
写真4:1988年に開設された三居沢電気百年館(右側の円筒形の外観の建物)
写真5:百年館から発電所建屋内を眺めた様子
写真6:日本機械学会からの認定状と、記念のクリスタルトロフィー
百年館の2階の外にあるテラスに出ると、現役の導水管と、初代の導水管の跡地を眺めることも出来ます。レンガ造りで、これまた趣のあるものです。
写真7:百年館2階のテラスから見た、現役の導水管(左側)と、初代の跡地(右側)
仙台城などを巡回するループバス「るーぷる仙台」でも行くことができます(この場合は、停留所番号11の「交通公園・三居沢水力発電所前」下車で徒歩3分)。仙台へお越しの際は、ぜひ一見されることをお勧めします。
参考:東北電力Webサイト「三居沢電気百年館」紹介ページ
http://www.tohoku-epco.co.jp/pr/miyagi/sankyozawa.html
吉岡 泰亮(広報委員会)