立命館大学 仲上健一

 4月になると、新年度で入学式・入社式と気分は一新する。桜も散り始めると、大阪府高槻市にある芥川(あくたがわ)では、恒例の「こいのぼりフェスタ1000」が4月下旬に行われ、高槻市民のみならず遠くからは大阪市内からも多くの人々が参集する。しかし新型コロナウィルスのため、2021年も昨年に引き続き中止となった。地元の「号外NET 高槻市・島本町」では、「悲報」と伝えていた。

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資料1 号外NET 高槻市・島本町 2021.3.16より

 「こいのぼりフェスタ1000」は、1992年4月(社)高槻青年会議所創立25周年の記念事業として「こいのぼりフェスタ1000」が開催されたものであり、今年が30周年の記念すべき年になる予定であった。「芥川」の門前橋から芥川橋までの550メートルの両岸からロープを張って川の上に市民から提供された約1000匹のこいのぼりをゴールデンウィーク中心に約2週間泳がせるイベントである。「地域に根差した事業」として成長しており、1994年には市民・企業・行政の三位一体の協議会である「こいのぼりフェスタ1000推進協議会」が発足した。

 私も2016年に高槻市に居を構えて、早速「こいのぼりフェスタ1000」に参加した。アクセスはJR京都線「高槻駅」北口から芥川商店街を通って徒歩15分である。勇壮というより、手作り感満載の実に親しみやすい「こいのぼりフェスタ」である。

 全国の鯉のぼり祭りとして、有名な「杖立温泉鯉のぼり祭り【熊本県】」、「館林こいのぼりの里まつり【群馬県】」、「浅野川・鯉流し【石川県】」などに比べると知名度は低いかも知れないが、味わいのある「鯉のぼり祭り」である。

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写真1 2018年のこいのぼりフェスタ1000(20180428/仲上健一撮影)

 特に驚いたのが、芥川で子供が魚取りに興じていたことである。日頃ゲームに夢中になっている子供が魚取りをすることで、「芥川」の記憶を生涯刻んでいるのであろうと思った。

 尋常小学唱歌「こいのぼり」の3番の歌詞を思い出した。

「百瀬(ももせ)の滝を登りなば、

忽(たちま)ち竜になりぬべき、

わが身に似よや男子(おのこご)と、

空に躍るや鯉のぼり。」

 子供たちには、「こいのぼりフェスタ1000」を通じて、「川」、「水」、「魚」、「環境」に興味を持って、さらには「芥川の歴史」にも関心を持ってもらいたい。

 芥川の「こいのぼりフェスタ1000」の会場すぐ近くには、JT生命誌研究館があり、知的好奇心を満たすには最適なところである。

 また、上流には昨年度のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で舞台となった三好長慶の「芥川山城」があり、地元愛を高めるには格好な河川である。

 最後に、芥川の水利に関心を持っていただいた水資源・環境学会・会員諸氏に、古藤幸雄著、『芥川上流域における水論の史的研究』、一粒書房、2006年を紹介したい。

 著者は同志社大学英文科のご出身で、英語教員として,校長としてご活躍された教育者であるとともに、芥川(服部)に生まれ育って地域史研究に全身全霊で取り組まれている歴史研究者である。著書の中では、三好長慶裁許状付図、川替え、服部村・郡家村・真上村水論が中心に展開されている。「水」という資源をめぐって争ってきた史実を綿密な論証で「水論」が展開されている。著者の祖先が関与されていたことを「他人事」でなく「我が事」として、豊富な資料と付図で見事に展開されており、思わず引きこまれてしまった次第である。

古藤幸雄氏ホームページ

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写真2 「こいのぼりフェスタ1000」開催中の芥川で遊ぶ子供
(20180428/仲上健一撮影)

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